2012年02月22日

自閉児連載05 冬が始まって間もない頃、

『数字と踊るエリ』に書かれた内容以前の物語(エリ0歳時)5 
連載5 冬が始まって間もない頃、「ポコポコ蹴っ飛ばすから、ポコ太」と妻は言った。それが胎児のあだ名になった。「絶対に、男の子だよ。こんなに強く蹴っ飛ばしてくるんだもの」−そうさ、ほんの少し後には、こんなことは全部終わっていて、僕たちはポコ太を抱きながら笑いあっているんだ。−僕の想像の中に、ポコ太はき
ゃしゃな学生服姿の若者の姿で何度も登場した。小柄で年中風邪や胃痛を起こしているが、スポーツは万能で、妻の生き写しのようなきりりとした細面のまなざしはいつもひたむきなものを浮かべている。僕に似ている何かなど、この世から消え失せればよい。妻が今度は男になって、もう一度この世に生を受けた−そんな真っ直ぐな
君に、いつか僕が父の歴史を語る日がやってくることだろう。
 再び呼吸が速まり始めた。「あんまり楽にならないの。今度、ふくらはぎ、もんでくれる?ぱんぱんに膨らんで、そっちも痛くて・・・」ここ1カ月近く、ふくらはぎを揉むのは日課になっていた。「ごめん、やっぱり腰の後ろにまわって・・・」僕は後ろに行ったり前に行ったり態勢を変えたりして、そのたびに涙をぬぐった。避
けようのない巨大を前にして、僕たちは、たった二人の同志だっだ。
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